伊勢神宮初心者虎

東京から日帰りで行く伊勢神宮

あなたも“一度はお伊勢参り”伊勢神宮がパワースポットと騒がれるワケ~前編~

今年は空前の参拝ブームと言われる。なんたって出雲大社(島根県出雲市)の「平成の大遷宮」に続き、伊勢神宮(三重県伊勢市)で20年に一度の「式年遷宮」。※式年遷宮とは、20年に一度社殿をすべて新しくし、神様に引っ越して頂く儀式のこと。

 

このイベントの影響もあり、神宮司庁によると、今年1月から今年の9月までの参拝客は900万人を突破したという話である。この参拝客数は、過去最高の記録だそうだ。この伊勢参拝、通称“お伊勢参り”は江戸時代には「男は一生に一度はお伊勢参りと吉原」と言われたほど死ぬまで一度は行きたいという人気スポットであり、日本中から人々は何日もかけて伊勢へと旅したのである。

 

 

だが当時“お伊勢参り”に行けるのは、ある程度金銭的にゆとりのある人しかいけず、特に旅に足手まといな女、若い人などは行きたくてもなかなか行くことが出来なかった。

 

しかし、今では女性達もこぞって“お伊勢参り”……なのである。とかく女子の間ではパワースポットと騒がれ大人気の“お伊勢さん”なのである。ここはひとつパワーをいただきに伊勢を目指してみた! 実際参拝してみてなぜ“伊勢参り”がこれほど注目を浴びるのかが理解できた。

 

まさに神聖なる神域

清らかな五十鈴川のほとりにある伊勢神宮は広大な森林で囲まれている。宮域林と呼ばれるその山林は約5,500ヘクタールもの広さがあり伐採が禁じられていて神秘的で神聖な雰囲気に包まれている。また神宮の長い参道沿いには樹齢数百年から1000年ものスギの巨木やクスの木、ケヤキの大木などがそびえたち厳粛さが漂う。この森林に囲まれた玉砂利の参道を歩くと、深呼吸したくなるのと同時に心が引き締まる。

 

外宮と内宮

伊勢神宮は太陽を神格化した天照大御神を祀る皇大神宮と、衣食住の守り神である豊受大御神を祀る豊受大神宮がある。天照大御神が祀られている皇大神宮を一般的には“内宮”(ないくう)、豊受大神宮は“外宮”(げくう)と言っている。内宮と外宮は離れているため、観光で内宮の参拝のみで済ませてしまう方も多いがどちらも参拝するのが正しいとされているのだ。

 

唯一神明造り

神明造り(しんめいづくり)は、もっとも古い日本の神社建築様式。神明造りは、釘を使わず、棟木(※1)の両端をヒノキの素木(着色しない木・しらき)を用いた棟持ち柱(※2)で支え、かやぶき屋根に鰹木(かつおぎ)と千木(ちぎ)があるのが特徴。※1棟木(むなぎ)とは母屋や桁と平行に取りつけられる、屋根の一番高い位置にある部材のこと。

 

※2棟持ち柱(むなもちばじら)棟木を直接支える柱。前身は弥生時代の高床式の穀倉倉庫を模した建物で宮殿形式に発展し変化したもの。

 

また伊勢神宮正殿は他社においての神明造りとは異なり、独自の様式を備えているため、他に類例のない神明造りの意味で“唯一神明造り”と呼ばれている。この“唯一神明造り”は神様のお引越しと言われる式年遷宮により保たれている。20年に一度、同じものを建て替えていくことで約1300年前の建築様式が受け継がれているのだ!

 

古い建物は取り壊してその場所は更地となりまた20年後にその敷地に建てられそれが繰り返されていく。またこの古い社殿の材木は、伊勢神宮の鳥居や橋にリサイクルされたり他の神社で再利用される。伝統を守る、物を粗末にしないという日本人の心も受け継がれているのだ。

 

榊 (さかき)

鳥居をはじめさまざまな箇所に榊が飾ってある。榊は1年中青々として生命力のある神様の植物とされている。外宮内宮で100ヶ所ほど置かれているが10日で交換される。

 

伊勢神宮参拝ルール

外宮をまわってから内宮を参拝するのが昔からの習わしとされている。また参拝前に手水舎でお清めを行うのは勿論のことであるが、昔は五十鈴川で身を清めていた。鳥居をくぐるまえに一礼すること。帰りも同様。また外宮では左側通行、内宮では右側通行、真ん中は開けておくのがしきたり。参道の中央は「正中」といい、神様が通る道である。

 

個人の参拝や願いをかける宮は別

幾つかの鳥居をくぐり参道を歩きやっと御正宮の前に立ち『さていよいよ神様に頼み事をを』……なんてことはしてはいけない。伊勢神宮の正宮では国の弥栄や繁栄、発展を願う。または神様に対する感謝を表す。つまり、御正宮は「神恩感謝」と共に、「日本の安寧」や「世界平和」を願うところであり、個人的なお願いは許されない。個人的な想いは伊勢神宮のそれぞれの別宮でお伝えする。

 

伊勢神宮の内宮では『荒祭宮』(あらまつりのみや)、伊勢神宮の外宮では『多賀宮』(たかのみや)でお願いするとされている。注意・正宮の前の石段より先は撮影禁止である。ここはさらに神聖なる場なのである。

 

パワースポットと騒がれ、今年は空前の参拝ブームなどと言われているがそこにいけば何かもらえるとかご利益があるなどと勘違いしてはいけないということなのだ。ここは感謝をする場である。

 

伊勢神宮が聖地として力に満ち溢れている場所なのは伊勢神宮のご祭神は全ての人間が生きる為の力を司る神様だからかもしれない。

 

太陽神である天照大御神と食を司る神様である豊受大御神。ここは生きているそのものに感謝するのだと……。毎日の生活に追われているととかく忘れがちなことである。

 

また人は欲深いもので、苦しい時は神頼みしたくもなり、願いを実現したいがために手を合わせる。「事業に成功したい」「夢を叶えたい」「恋愛成就」「縁結び」……有り余るお願いごとがたくさんあるだろう。しかしここでは己の利よりも他利の精神。人々の暮らしや幸せ祈ることがまず先決なのだ。

 

襟を正すこと、または無になること、浄化すること、これまでのことに感謝し振り返ってみることこそが必要なのだと感じたお伊勢参りである。

 

LAURIER 2013年10月22日 「あなたも“一度はお伊勢参り”伊勢神宮がパワースポットと騒がれるワケ~前編~」より引用

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